小泉宗雄・「三光太源文化研究所」のご案内

特別編(第八話)2018年2月


 平成30年2月吉日


スピリチュアル エピソード 特別編 第八話


ローム太霊がその死を哀惜された

父小泉平一の軌跡



第八話 「託された生涯の使命・乗天坊霊神に
     伴われて豊野の地底で見たものは−」



 それは昭和11年3月27日の夜半の事でありました。平一が京橋区木挽町一丁目6番地・現在は中央区銀座となっておりますが、そこにあった3階建の小泉商会の2階の、通りに面した客間で暗中に坐して行をしていたところ、名を呼ばれたのでびっくりしました。思わず目を開けると、そこに妙義山乗天坊霊神が立っておられたとのことであります。
 以下は平一の回想であります。

 「『汝を連れて行く場所がある。儂の後について参れよ』そう言われたので、思わず立ち上がったんだ。すると、外に面している客間の窓の一つが左右に開いたと思うと、霊神は窓を跨がれて外に出たんだよ。私も同じようにして外に出て、そして、霊神に従って空の上を歩いて行ったんだ。
 下を見ると銀座の夜店が店をしまいかけたり、京橋際の川端に出ているおでん屋の屋台に人の出入りのするのが良く見えた。そして日本橋を、上野の駅をと足下に見て鉄道線路沿いに空中を歩いて行くと、暫らくして大きな駅の上に出たんだ。
 『これが長野じゃ。あそこに寺の屋根が見えるであろう。あれが善光寺だ』乗天坊霊神がそう言われた。それから暫く空中を歩いて、地上に降り立った所に立派な松の巨木があったんだ。この松は現在天然記念物になって、千載の松と名付けられているんだよ。その松の根方で、乗天坊霊神が鷹に応変されたのには驚いた。その鷹は両羽に私を抱いて地底めがけて飛行して行った。そして辿りついた眼前に膨大な黒い液体を湛えた湖が広がっていたんだよ。
 『これは石油である。この石油を世に出すのがお前に与えられた使命である』乗天坊霊神にそう言われたんだ。そしてはっと気が付くと、私は坐して行を続けていたんだよ。」
 「乗天坊霊神に伴われて地底深く入ったのは、現界の地底ではなく幽界であり、地底の幽界で見た巨大な石油の大海は石油の幽体なんだ。なにも現実の石油層を見たわけではない。でも、幽体がそこにあるのなら現物がそこに所在するのは当然の理で、現幽は一如なんだ。あたかも人間の心は心臓そのものにあるのではなく、肉体と次元を異にし、肉体と唇歯交錯している幽体・霊体・元体にあり、これらが脳に指令を与えているのと同じことなんだよー。
 それから暫くして、長野から懇意にしている取り引き先の人が商用で訪ねて来たので、長野にこれこれの所があるかと尋ねたところ鞄から地図を取り出し、『多分ここでしょう』と教えてくれたのが長野県上水内郡若槻村の豊野と云う所だったんだー。」

 荷造り材料や雑貨を商っている小泉商会の店主の平一にとって、石油開発の事業は全く畑違いの未知の領域でありました。平一は几帳面な性格だったので、丹念に日記を付けておりました。しかし、遺憾ながら、それからどの様にしてこの事業に取り組んだのかが記録されていた筈の平一の心霊日記は、昭和14年8月以降の物しか残されておりません。それ以前の物は戦災で消滅してしまったのです。従って、それらのことと、並びに竹内満朋の降霊会等で背後の神霊達からどの様な霊言が降ったか等は不詳でありますが、僅かに昭和13年9月20日の出来事として、以下の記録が残されております。

 その日の夜、夢で老翁が現れ「汝の油は御嶽山松尾滝なる黒蛇神の力を借りずばなし難し。我伴なうによってよくよく頼み見よ」と云われて光の水落ちて奔騰せる大いなる滝にたどり着いたとのことです。
 「滝壺より斜めに大いなる岩石多岐に向かって屹立せり。見れば岩石の上に金色の眼らんらんとして見るに恐ろしき黒い蛇,蛇骨より光焔だして蟠踞しいるなり。老翁の教え賜いし黒蛇なりと悟り、余はこの蛇霊に対し心を込めて油に対する示教を懇願せり。されど黒蛇霊うそぶきあざ笑うのみで答えず、余再三再四置かずして礼を尽くして懇願すれども、どこ吹く風と答えざるなり。夢覚めて奇なる夢なりと思い、竹内君に招霊す。隼人霊神いわく「それは神からの知らせでしょう。蛇神を貴方の眷族につけなければ、油は難しいと思います。それは御嶽山に行って良く頼んでみるより道が無いと思います。来年雪解けを待ってお行きなさい」
 そこで翌14年4月28日の深夜、竹内氏を伴なって夜行列車にのって翌日午後3時に松尾滝に辿り着いたとのことであります。そして滝にかかって禊をして蛇神が我が身に力を貸して頂けるよう松尾竜神に祈りを捧げようとしたのですが、滝が凍り付いて水がありません。
 そこで下方はるかにある大払いの滝には水が凍らずに流れているので、こちらの滝で禊をしようと云うことになり、二人で滝壺に飛び込み祈り始めました。ところが、暫くして竹内さんの顔面が蒼白となり、嘔吐すると共に裸身が紫色になって膨れ上がってしまいました。驚いて傍らにあった観音堂の扉をこじ開けて竹内さんを抱き入れ、一心に神に祈念して看病したとのことです。
 すると暫くして、何者かが竹内さんに憑依して「汝ら祈願せんとて松尾滝に来たるに、水無しとて大払い滝にかかるとは何事ぞ。かかることにて汝の祈願するところ叶うと思うや。懲らしめて汝らに罰あてしなり。以後よく心得よ。されど、汝らに神罰当たる身になりしことを嘉す。」と云われ、竹内さんの目が覚め、身体が元に戻ったとのことであります。
 それから2人で松尾滝に戻り、水の無い滝にかかって一心に祈りました。すると平一の霊眼に恐ろしい老姿が滝壺の後から出てこられて「汝の祈願聞き届く。これより汝を守護し仕事助くるべし」と云われました。この老姿は黒蛇神の仮の応変でありました。更に、松尾竜神からも守護の神示があったのでした。
 そして、昭和14年9月2日の日記に「本日鉱山監督局より若槻村・神郷村の石油試掘許可おりる」との記録があり、石油開発の事業が本格的にスタートしたのでした。
                                                             完