小泉宗雄・「三光太源文化研究所」のご案内

特別編(第三十六話)2021年7月


令和三年7月吉日


スピリチュアル エピソード 特別編 第三十六話


ローム太霊がその死を哀惜された

父小泉平一の軌跡



第三十六話

平一が最も信頼した北原猪義の痛恨の生涯
について


 平一の神業の同志であり、三光太源門下の筆頭であった北原猪義は、平一が生涯を通じて最も信頼し、併せて友誼を重ねた人であります。
 猪義は信州飯田に生まれました。昭和の時代、神田にベルモットと言う大きな帽子屋がありました。
 其の経営者が飯田生まれとの事で、郷里の青年達がその縁を頼って上京し、修行を重ねて独立して行き、その中に、第13話でお話しした吉江茂と北原猪義がおりました。
 猪義は同僚のさだと結婚して独立し、六本木でベルモットと言う婦人帽子の会社を立ち上げ、吉江茂を通じて平一との交誼が始まりました。
 「吉江さんから紹介されて、喫茶店で小泉先生にお目にかかりました。初対面の印象は、金歯が光って軽薄な感じがしましたが、お話を聞いてこれは大変な人だと思い、ついて行くことにしたんです。」
 亡くなる少し前の事でした。朝の通勤の井の頭線の車中でばったり出会った猪義は、平一との出会いの経緯を、その様に話してくれました。
 それが何時頃の事だったかは聞き漏らしましたが、恐らく戦前の事と思われます。電車が渋谷に着く迄のわずかな時間ではありましたが、もっと色々なことを聞いておけば良かったと、残念に思っております。
 そして神霊の道に入り、行業を重ねて行く内に、平一から豊野油田開発の神業のことを聞かされて心がひかれ、やがてその神業への参画を熱望するようになり、昭和20年代、窮乏した平一に様々な気配りの手を差し伸べたのです。
 例えば、旅費を窮乏して恒例の妙義山参詣をためらっている平一に、同行を希望してその費用を負担したり、鉱区税支払いを援助したり、併せて、門下の婦人方の困りごとに親身になって助力したり、様々な誠意を尽くして神業への参画を許されたのでした。
 そして。後ほどお聞かせする、昭和31年12月の豊野油田の試掘の資金の大半は、北原猪義と菊池豊が負担した様であります。
 又、太源石油株式会社設立にあたっては専務となって、太源石油の本社は北原猪義が没するまで、オーシックと同じ住所に登録してありました。
 オーシックは十数名の社員を抱え、新宿と札幌の三越デパートに売り場を設け、さだ夫人が帽子のモデルを務めるなど繁栄した様であります。
 大学受験に失敗した私の兄幸雄も、シンガーミシンに転職するまでの10年間お世話になりました。
 余談でありますが、平一が門下、関係者の中で、私に叔母さんと呼ばせたのは、竹内満朋夫人のよしと、北原猪義夫人のさだの2人だけでありました。
 誠実で気配りが細かい猪義は、竹内満朋や麦林楢次郎などにも信頼が厚く、三光太源の門下の、取り分けて婦人方から慕われておりました。
 そのような猪義に、思いもよらぬ災厄が襲ったのです。それは、並木と言う男の振り出した手形に裏書をしたところ、その手形が不渡りになったことであります。
 私は並木と言う人の詳細は承知しておりませんが、仕事の関係で石油資源株式会社に出入りしており、何かの機会に平一と猪義が知己となり、石油資源への頼み事などの仲介を依頼していたようで、「太源石油さんは良い人を使っていますね、」とその様に云われたとの事で、特に猪義と懇親を重ねた様であります。
 ところで平一は日ごろから、神業は三光道真壽壽教文に記してある「奇人招乗」・常人と一風変わった、しかし力を持つ、選ばれた人を招き寄せる事によって、これを成就させることが出来るのだ、と言っておりました。
 猪義は、並木こそその奇人と思い込み、つながりを深めるために、平一に相談することなく、依頼された手形の裏書をしてしまったのです。
 それから、どのような約束と経緯からかは判りませんが、猪義は回されてくる並木の手形を落とすのに、奔走せざるを得なくなり、事業が傾いて行きました。洵に痛恨の一事でありました。
 「一言相談してくれればー。奇人は信仰心のある人間だと何時も言っていたのにー、」平一はそう述懐しておりましたが、後の祭りでありました。
 重ねて次男が重い病で入院し、それらの心労で疲れ果てた猪義は、脳卒中を発症したのでした。
 私は病院に見舞いに行ってその病状の重いのに驚き、平一と竹内満朋に、何とか手立てがないかと、赤電話で何回も何回も訴えました。
 「宗雄君、そう言われてもなあー」と困惑する満朋の声が昨日の事のように思い出されます。
 そして、夫人のさだ、平一や満朋を始めとする多くの関係者の懸命の祈りも空しく、昭和51年4月12日にその生涯を終えました。
 それから46年、毎月12日は、朝の祈りの中の先祖への供養に加えて、猪義の御霊のご冥福をお祈りしております。