ポチは銀座一丁目にあった荷造り材料商・小泉商会」の店舗併用住宅で飼われていた雑種犬で、昭和一桁の終わりに病死しました。
ところが、死後間も無く小泉平一の下に「若旦那」と云って出現し、色々と商いのことを、例えば「明日誰々がこんな商談で来てこんなことを話すが、実は内心はこんなことを考えているので―」等を教えて呉れて、「当初は大変役に立ったが、段々小泉の若旦那は恐い、何でも見透かされてしまう」との評判が立ち、ポチの好意が裏目に出るようになってしまったとのことです。
するとある日、「若旦那付いていらっしゃい」と云って銀座から市電(現在は都電)に乗り、田町にある森永製菓に勤務していた竹内満朋の元に案内して、その後二度と姿を現さなかったとのことです。
以降、半世紀を経た平成13年のある日、通勤経路である田町の森永製菓の前で、「孫旦那」と言う奇妙な呼び方で私の前に出現しました。同年、私が処女作「最後の物理霊媒・竹内満朋」でポチの功績を紹介したこと、の挨拶でした。ポチにとっては祖父の益太郎が「大旦那」、父の平一は「若旦那」であり、そして息子の私を「孫旦那」と呼んだのです。それ以降、ポチは私の背後の霊団の一員に加わったようであります。